貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の開業に必要な要件や流れとは?
観光や送迎などで役立つ貸切バスを事業として始めたい場合、一般貸切旅客自動車運送事業の許可が必要です。
誰でも簡単に始められる事業ではなく、一定以上の要件を満たさなければなりません。
一般貸切旅客自動車運送事業の許可を得ると何ができるのか、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を得るための条件、そして実際の開業の流れを解説します。
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)とは
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)は定員11人以上の自動車を貸し切って運送するバス事業を指します。
有償で人を運送する事業にはタクシー、路線バスなどもありますが、貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)では一定以上の定員が定められています。
観光だけでなく送迎のための運送も貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)に含まれます。
観光業界の団体旅行
貸切バスの中でも代表的なものが観光業界の団体旅行です。
出発地と目的地が決まっており、それぞれに合わせて乗客を集めて運送します。長距離の移動を伴う貸切バスから、短距離の観光地を案内するだけの貸切バスもあります。
会社・町内会などの小旅行
会社や町内会などの小旅行に使われる貸切バスもあります。
観光バスよりも小規模なサイズのバスが利用されることが多いです。会社や町内会と契約している場合もあれば、旅行会社と契約して運送する場合もあります。
自治体や学校PTAなどスクールバスの契約輸送
観光や旅行、長距離移動だけでなく、自治体、学校PTA、学校、団体などの送迎バスとして貸切バスが利用されるケースもあります。
冠婚葬祭の施設の行き帰りにも送迎バスは利用されます。毎日一定の時間、一定のルートを回るものです。送迎バスを利用する施設、団体と直接契約するケースが多いです。
貸切バス許可取得の要件
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可を得るためには、人、資金、車両、施設において一定の要件を満たす必要があります。
それぞれの項目を簡単に解説します。
人の要件
安全管理者1人以上、運行管理者2人以上、さらに整備管理者1人以上が必要です。事業主、代表取締役が法令試験を受験し、合格しなければなりません。
運転者は2カ月以上雇用できる人、14日いないに賃金を支払える人などの条件を満たす人を5人以上確保してください。
資金の要件
一定以上の資金を用意できなければ貸切バス事業の許可は得られません。
貸切バス事業を開始するためには役員報酬2カ月分、従業員全員の給与2カ月分、バスに関する税金、保険料の1年分、さらに営業所や車庫の6カ月分の賃料をまとめて用意する必要があります。
車両の条件
貸切バス事業をスタートするためには、事業のために使うバスを一定数以上用意しなければなりません。小型車、中型車の場合は3台以上、大型車の場合は5台以上の用意が必要です。
すでに用意している必要はなく、用意を予定していることを証明すれば認められます。リース契約を結んでいる場合は契約書も提示しなければなりません。
施設
貸切バス事業で利用する施設にも一定の条件があります。
事務所、営業所、休憩所、車庫が都市計画法や建築基準法、農地法などに違反している場合は開業できません。また、使用権限を証明する書類も必要です。
貸切バス事業を開業するまでの流れ
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可を得て実際に開業するまでの流れを解説します。
まずは条件を満たす準備をし、申請書類の提出、試験の受験、最後に書類審査があります。スムーズに開業できるよう、あらかじめ流れを確認しましょう。
条件を満たす準備
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)を始めるために必要最低限の準備を始めます。
後期で解説したとおり、貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可を得るには一定の条件を満たす必要があります。
営業所や休憩、仮眠を取る場所、車庫を用意しなければなりません。さらに貸切バスとして使う車両を選び、契約します。
安全統括、運行など、それぞれの管理をする人材を用意します。さらに自己資本を用意した上で、事業収支見積書などを作成します。
申請書類の準備を進めながらでも条件を満たす準備はできますが、作成途中で変更が出てもすぐ対応できるようにしておきましょう。
申請書類の作成・提出
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可を得るための申請書類を作成します。
- ・一般貸切旅客自動車運送事業経営許可申請書
- ・所要資金および事業開始に要する資金の内訳
- ・資金の調達方法を記載した書面
- ・施設の見取り図や状況がわかる書類
- ・都市計画法等関係法令に抵触しない旨の宣誓書
- ・運転者の就任承諾書
- ・安全統括管理者の就任承諾書
- ・運行管理者の就任承諾書
- ・整備管理者の就任承諾書
- ・道路運送法第7条に該当しないことを証明する書類
- ・社会保険加入に関する宣誓書
上記の他、法人を設立する場合、すでに法人として設立されている会社が貸切バス事業を始める場合、個人で貸切バス事業を始める場合には別途書類が必要です。
営業所、休憩所の様子がわかる見取り図や写真、車庫の写真なども用意しなければなりません。書類がすべて用意できたら、営業所を管轄している運輸支局へ提出します。
法令試験の受験・合格合格
申請した書類に許可が降りると、次は法令試験を受けて合格しなければなりません。受験者は申請者本人、または常勤の役員と決められています。
試験は毎月1回行われており、実施の7日前までに試験日時や場所の詳細が送付されます。
試験内容は運送法に関してがメインで、〇×、語群選択、記述のすべての問題が出題されます。30問中9割以上の得点で合格です。
不合格だった場合は再試験の受験が可能ですが、再試験は1回のみです。持ち込み可能な書類もあるため、事前にきちんと試験対策をした上で臨みましょう。
貸切バス事業の開業で負担を減らすなら中古バスもおすすめ
バスの調達資金にお悩みの方は、中古バスを選ぶことも検討してください。
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)を始めるにはバスの用意だけでなく施設や車庫の用意など、莫大な資金がかかります。中古バスであれば新車を購入するよりもぐっと費用を抑えて事業を開始できます。
中古バスの中でも比較的新しいモデルやきちんとメンテナンスされているバスであれば問題なく貸切バス事業をスタートできます。
中古バスと一口に言っても、販売業者によって取り扱うバスの種類や金額、メンテナンス内容、サポート内容は大きく変動します。
費用面だけでなく、状態やアフターサポートなども確認した上で最適な中古バスを選びましょう。
貸切バス事業を始める準備をしよう
貸切バス事業(一般貸切旅客自動車運送事業)の許可を得て事業をスタートする方法を解説しました。
貸切バス事業をスタートさせるにはさまざまな準備が必要です。あらかじめ流れを確認し、手順を追ってスムーズに準備を進めましょう。自己資金が少ない、初期費用を抑えたい方は、新車ではなく中古バスを選ぶこともおすすめです。
中古バスを選ぶ際は価格以外にも、事業の目的に合っているか、充分使い続けられるだけの整備がされているか、中古車販売業者のメンテナンスやサポートは充実しているかを確認して選びましょう。