EVバスとは?導入するメリットや導入事例を紹介
EVバス(電動バス)は、100%電気だけで動くバスのことです。軽油などの燃料を燃やして走るディーゼルバスよりも環境負荷が低く、静音性や運転性能に優れています。日本でも国土交通省が補助制度(地域交通グリーン化事業)をスタートするなど、EVバスの普及に向けた下準備が整ってきています。この記事では、EVバスの特徴や導入するメリット、国内のEVバス導入事例を紹介します。
EVバスとは?
EVバス(電動バス)とは、「電気を充電した蓄電池の電力でモーターを動かすことによって走行する」バスを指します。軽油などの燃料で動くディーゼルバスや、水素を燃料とした燃料電池バスと異なり、100%電気だけで動くのがEVバスの特徴です。ここでは、EVバスの種類や仕組み、導入が進む背景を簡単に解説します。
EVバスの種類
EVバスは、モーターと蓄電池を動力源として走る電動バスです。蓄電池に電気を充電し、電力でモーターを動かすことで走行します。EVバスは、蓄電池の容量によって、「短距離走行多頻度充電型」と「長距離走行夜間充電型」の2種類に分けられます。[注1]
種類 | 特徴 |
短距離走行多頻度充電型 | 車両重量を抑えるために蓄電池容量を小さくし、起終点等の運行途中で「継ぎ足し充電」を行う。我が国で導入されている電気バスはこのタイプが多い。 |
長距離走行夜間充電型 | 蓄電池容量を大きくし、1日の運行距離分の充電を夜間に1回行う。外国の自動車メーカーが開発して国内でも導入されている。 |
日本では、主に蓄電池の容量が小さい短距離走行多頻度充電型のEVバスが普及しています。短距離走行多頻度充電型のEVバスは、航続距離が30~80km程度と比較的短いため、路線バスでの運用に向いています。
EVバスが導入される背景
EVバスの導入が進む背景には、地球温暖化を始めとした気候変動リスクへの強い懸念があります。軽油を燃やすディーゼルバスは、大量の二酸化炭素(CO2)を排出します。輸送量当たりの二酸化炭素の排出量をみても、バスが占める割合が非常に大きいことがわかります。[注2]
CO2排出量(g-CO2/人km) | |
自家用自動車 | 131 |
航空 | 133 |
バス | 109 |
鉄道 | 28 |
EVバスは電気のみを動力源とするため、走行中にCO2などの温室効果ガスを排出しません。そのため、ディーゼルバスからEVバスへの切り替えを目指す事業者も少しずつ増えています。
EVバスを導入する3つのメリット
EVバスを導入するメリットは3つあります。
二酸化炭素(CO2)の削減につながる
騒音が少なく、運転性能に優れている
ディーゼルバスよりも運行費用を抑えられる
それぞれのポイントを順番にみていきます。
二酸化炭素(CO2)の削減につながる
EVバスはディーゼルバスと異なり、100%電気だけで動くバスです。プラグインハイブリッドカーなどの内燃機関を搭載した車種をのぞいて、走行中にCO2などの温室効果ガスを排出しないため、環境負荷の軽減につながります。実際に国土交通省の調べによると、大型車で20~30%程度、中型車で18%前後のCO2排出量を削減できることがわかっています。[注1]
電動バス | ディーゼルバス | |
CO2排出量(kg-CO2/km) | CO2排出量(kg-CO2/km) | |
A社(中型車) | 0.387 | 0.564 |
B社(中型車) | 0.498 | 0.822 |
C社(中型車) | 0.641 | 0.892 |
D社(大型車) | 0.508 | 0.672 |
騒音が少なく、運転性能に優れている
EVバスの導入事業者のアンケートでは、EVバスは静音性に優れ、運転性能が高いこともわかっています。[注1]
車内の騒音、振動が少ない
発進時の加速性、登坂性、走行中の追い越し時の加速性が優れている
EVバスは蓄電池に電気を充電し、モーターを回転させるシンプルな構造のため、部品点数が少なくなっています。そのため、ディーゼルバスよりも走行中の騒音が少なく、快適に運転することができます。
ディーゼルバスよりも運行費用を抑えられる
国土交通省の調べによると、EVバスを導入することで、運行費用や車両整備費用などのランニングコストを節約できます。
実際に、導入事業者の使用実績を評価したところ、運行費用(燃料油脂費または充電費用)は既存車両から8~44%の削減、車両整備費(車検整備費、車検以外の整備費用)は最大55%の削減が期待できることがわかっています。[注1]
一方、EVバスはディーゼルバスよりも購入費用が高額な傾向にあります。しかし、国や地方自治体の補助制度を利用すれば、車両本体価格の1/2~1/3程度の補助金を受けることができます。そのため、導入コストも既存車両と同等かそれ以下に抑えられています。
このように走行費用の経済性、静音性や運転性能、環境負荷の低さといった点で優れているのがEVバスです。
EVバスの導入事例
ここでは、国土交通省の「電動バス導入ガイドライン」で紹介されたもののなかから、EVバスの導入事例をいくつかピックアップして紹介します。[注1]
羽村市コミュニティバスの事例
東京都羽村市は、地域環境の改善や地球温暖化対策の一貫として、EVバスの「はむらん」を導入しました。平成24年に羽村市コミュニティバスのルートを見直し、EVバス専用の路線を新設しています。羽村市はEVバスの導入メリットを4点挙げています。
企業と地域のイメージアップや観光振興など、地域の活性化が図られる
乗務員からブレーキの利き具合、車内の騒音・振動が少ないといった評価を得ている
排出ガス、エンジン音がないため沿道環境の向上が図られる
供給電力の選択によりカーボンフリー化も可能”
環境負荷の軽減だけでなく、ブレーキの利き具合や騒音・振動の少なさなど、走行性能も高く評価されています。一方、蓄電池容量が小さいため航続距離が短く、充電設備などのインフラ整備が導入後の課題となりました。
港区内循環バスの事例
東京都港区は、コミュニティバス「ちぃばす」の芝ルートにEVバスを4台導入しました。EVバスの導入メリットとして挙げられているのは、以下の3点です。
乗客から「静かで乗り心地が良い。」「あまり運行していない電気バスに乗れて良かった。」といった評価を得ている
乗務員からは、「車内の騒音と振動が少なく、発進時や追い越し時の加速性が良い。」「日常の点検・整備がディーゼルバスに比べて容易である。」といった評価を得ている
これまで大きな故障もなく順調に運行しており、整備面では、ディーゼルバスに比べて容易で整備費用も安い
港区のコミュニティバスでは、主にEVバスの乗り心地の良さや、走行性能の高さに注目が集まっています。また、ディーゼルバスよりも点検整備が容易な点や、これまで大きな故障なく運行してきた実績も評価を得ています。
EVバスの特徴やメリットを知り、導入を検討しよう
EVバスは蓄電池に電気を充電し、100%電力だけで走行するバスを指します。軽油などの燃料で動くディーゼルバスと異なり、走行中にCO2などの温室効果ガスを排出せず、環境負荷が低いのがメリットです。
また、国土交通省の調べによると、EVバスは騒音が少なく、運転性能に優れることもわかっています。日本でも国や地方公共団体が補助制度を創設するなど、EVバスの導入コストを下げる取り組みが着々と始まっています。
EVバスの特徴やメリットを知り、車両の導入やディーゼルバスからの切り替えを検討しましょう。
[注1]国土交通省:電動バス導入ガイドライン(P5,P29~P30,P37,P44~)
[注2]環境省:運輸部門における二酸化炭素排出量