バスの安全対策で再確認すべき3つの重要事項
高速バスには安くて快適というメリットがあり、人気が高まっています。しかし、高速バスをはじめとして、バスによる事故も増えています。2005年には福島県猪苗代町にて、高速バスが死亡事故を起こしてしまいました。また、2007年にも大阪府吹田市でスキーバス事故が起こっています。
また、事故だけではなくバスジャックも発生しています。2000年、乗客であった少年がバスを乗っ取り、乗客3人が刺されるといったバスジャック事件は、世間に衝撃を与えました。
こうした事件から、2008年ごろからバスの安全対策が重要視されるようになり、さまざまな取り組みが始まっています。そして今もなお、バスの安全対策は急がれているのです。そこで今回は、バスの安全を確保するうえで再度確認しておきたい3つの対策を紹介します。
車内事故防止のための対策
車内事故は、バスで起こる事故のなかで最も多くを占めます。対策としてできることは、運転士と乗客がともに安全に気を付けた行動をとる、ということです。ここでは4つの具体的な方法を紹介します。
乗客へ注意喚起をする
バスを運行する側がどれだけ気をつけていても、乗客の行動によって車内事故が起きてしまう可能性はあります。乗客に対しても、しっかりと注意喚起をしておかなくてはなりません。
バス走行中は席を立たないように促すことは、基本中の基本です。降りる際も必ずバスが停止してから席を立つようにと伝えるようにしましょう。また、運転手に何か伝えたいことがあるというときに、乗客は席を立ってしまいがちです。伝えたいことがあるときは、自分より前の乗客に順に伝言をして運転士まで届ける、大きい声を出すなど、あらかじめルールを決めて乗客全員と共有しておきましょう。
車内向けのドライブレコーダーを設置する
ドライブレコーダーは、万が一のアクシデントに備えて用意しておくと便利です。事故が起こったときやあおり運転など、ほかの車とのトラブル時に役立つのはもちろんですが、車内で起こるトラブルに対しても有効といえます。車内の乗客同士でトラブルが起こってしまったときの解決にも役立つでしょう。また事故ではありませんが、車内でバスジャックなどの犯罪が起こったときも重要な証拠になります。
車内点検を徹底する
乗客が乗り込む前の点検は、バス会社の義務といえます。清掃がしっかりといき届いているか、椅子に不備はないかなど、基本的な点検で防げる事故もあるのです。思わぬ事故が起こる原因を徹底的に取り除くという意味でも、車内点検はきちんと行う必要があります。
ゆとりを持った運転を心がける
急ブレーキや急発進、減速をせずにカーブするなどの「荒い運転」は、車内事故を招きやすいでしょう。ほかの車を避けるために急ブレーキをかけなくてはならないときなど、やむを得ない場合もありますが、運転手の心がけ次第で避けられる運転もあります。
急がなければならない状況にしないよう行程にゆとりを持たせたり、イライラしないように運転士に無理な勤務をさせないようにしたり、バス会社側でできることから始めましょう。もちろん、運転士に対して、運転を指導することも大切です。
車内での犯罪を未然に防ぐ対策
バスの車内は「走る密室」です。乗客と運転士しかいない状態のため、乗客のなかに紛れた犯罪者が犯罪を起こす恐れもあります。車内で起こり得る犯罪を未然に防ぐための方法を2つ紹介します。
乗り場で不審者をチェックする
バスの主要な乗り場で警戒要員を配備し、乗客のなかに不審者はいないか確認するようにしましょう。乗客を疑うべきではないとはいえ、乗り込んでから犯罪を起こしてしまっては遅いのです。もし不審な人物がいたら、声をかけて反応をチェックしたり、運転士や添乗員に情報を共有したりするなど、事前に警戒しておくことができます。
乗客に警戒を促す
車内では乗客の気持ちも緩み、眠ってしまう人も多いです。しかし、眠っている間に盗難をする犯罪者もいるかもしれません。つい手荷物を離してしまいがちですが、車内でも貴重品は肌身離さず持つようにするなど、乗客に警戒を促しましょう。
運転士の健康管理の重要性
バス運転士に無理な勤務を強いて、その結果として死亡事故にまで発展したケースもあります。運転士が少なくなっている今だからこそ、運転士の健康管理を行い、無理のない勤務ができるように働き方を整備しましょう。
無理のない労働時間を設定する
バスの運転士は、実際に運転している時間と、乗客を乗せたり待ったりする時間があります。作業時間と手待ち時間と呼びますが、どちらも運転士の勤務時間であり拘束時間です。1週間あたり65時間が限度とされています。決して65時間を上回ってしまうことがないよう、勤務時間を調整しなくてはなりません。
また、1日あたりの拘束時間は13時間以内を基本とし、次の勤務までは8時間以上休息をとらなければならない、とされています。さらに、運転時間も始業時刻から計算して48時間以内で9時間が限度、1回あたりの運転時間は4時間が限度というように定められています。運転士の健康を損なわないために、労働条件を守ることがとても重要です。
体調不良時は柔軟に対応する
運転士が体調不良を訴えている場合は、必ず違う人員を確保しましょう。運転士本人は軽い風邪だから大丈夫、などといっていても、バス会社側がしっかりと休ませる決断をしなくてはなりません。今は軽い体調不良でも、運転はとても気力と体力を使います。運転中に悪化する恐れもあり、運転に集中できなくなれば事故を招きかねません。薬を飲んでいると眠気が襲ってくる場合などもあり、大変危険です。
代わりがいなくて無理にお願いしなければならない、ということがないように別の人員も確保しておくなど、人員にはゆとりを持っておきましょう。
身体のデータを収集する
健康であるかどうかは、自己申告だけではわかりません。運転士本人は大丈夫だと思っていても、身体には何らかの異変が生じているかもしれないのです。急な心臓発作や脳梗塞などで意識がなくなってしまう可能性も、ゼロではありません。実際に運転手の病気によって起こる事故も、後を絶たないのが現状です。
血圧や体温などを勤務前に計測したり、年に1度人間ドックや脳ドックを受けられるようにしたりすることで、運転士が安全に運転できる状態かどうかが確認できます。
安心して乗れるバスを目指そう
乗客は、安心して乗れるバスを求めています。バスの事故が相次いでいた時期は、乗客も事故を恐れてバスを避けていたため、乗客数がかなり減ってしまいました。事故後、各バス会社がさまざまな対策をすることで減ってしまったバスの乗客数も増加してきましたが、また事故や犯罪が起こると警戒して乗客数も減ってしまうでしょう。
乗客が不安に感じることなく、快適に乗れるバスを目指すためには、事故や犯罪を未然に防げる対策、そして運転士の健康管理が重要といえます。