EVバスの国産メーカーはある?日野・いすゞのEVバスを紹介
2022年に電気自動車(EV)の国内販売台数が過去最高を記録するなど、日本でもEVへの関心が高まりつつあります。[注1]
特に100%電気で動くEVバス(電動バス)は、国産メーカーも生産を強化しています。例えば、2024年度より、いすゞ自動車と日野自動車が国産EVバスの生産を開始することがわかっています。
しかし、日本のEVバス市場を席巻しつつあるのは、BYD(比亜迪)を始めとした中国のメーカーです。EVバスの製造は、なぜ中国のメーカーが強いのでしょうか。
この記事では、EVバスの主な国産メーカーや、国産メーカーがEV市場で苦戦している理由をわかりやすく解説します。
EVバスの国産メーカー
EVバスの生産に取り組んでいる国産メーカーとして、いすゞ自動車や日野自動車、トヨタ自動車などが挙げられます。環境に優しいEVバスへの関心が高まる一方で、EVバスの生産に乗り出す国産メーカーはあまり増えていません。
国土交通省の「電動バス導入ガイドライン」によると、国内で導入されているEVバスには次のようなものがあります。[注2]
区分 | 車名 | メーカー名(改造バスの場合は改造したメーカー名) | 車両サイズ | 航続距離 | 乗車定員 | 補給設備 | 充電方式 |
電気バス (短距離走行多頻度充電型) | 日野ポンチョEV | 日野自動車 | 小型 | 30km | 36人 | 普通充電器 急速充電器 | プラグイン方式 |
日野レインボー(改) | フラットフィールド | 中型 | 40km | 54人 | 普通充電器 急速充電器 | プラグイン方式 | |
いすゞエルガミオ(改) | 東京アールアンドデー | 中型 | 不明 | 49人 | 普通充電器 急速充電器 | プラグイン方式 | |
いすゞエルガ(改) | フラットフィールド | 大型 | 53km | 74人 | 普通充電器 急速充電器 | プラグイン方式 | |
電気バス (長距離走行夜間充電型) | BYD K9 | BYD | 大型 | 250km | 69人 | 普通充電器 急速充電器 | プラグイン方式 |
プラグインハイブリッドバス | 日野メルファプラグインハイブリッド | 日野自動車 | 中型 | EV走行:15km ハイブリッド走行:300km | 33人 | 普通充電器 急速充電器 軽油スタンド | プラグイン方式 |
燃料電池バス | SORA | トヨタ自動車 | 大型 | 200km | 77人 | 水素ステーション | - |
日野ポンチョEV(日野自動車)
日野ポンチョEVは、日野自動車が2011年に製造したEVバスです。現在も国内の路線バスなどで稼働しており、日本のEVバスのシェアを中国メーカーのBYDと分け合っています。例えば、日野ポンチョEVの導入事例として、東京都港区や東京都羽村市のコミュニティバスが挙げられます。[注2]
導入車両の分類 | 導入地域 | 導入年度 | 導入事業者 | 車名/メーカー(改造事業者) | 特徴 | |
電気バス (短距離走行多頻度充電型) | 小型 | 東京都羽村市 | 平成23年 | 西東京バス | 日野ポンチョEV/日野自動車 | 羽村市の「エイゼムス(AZEMS)プロジェクト」で太陽光発電による充電により、電気バスのゼロエミッション化を実現している |
東京都港区 | 平成29年 | フジエクスプレス | 日野ポンチョ(改)/フラットフィールド | 10分で電池容量の80%以上まで充電できる超高速充電器を導入している。 |
日野ポンチョEVは、従来のディーゼルバスと比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が2分の1以下に低減されており、環境負荷が低いのが特徴です。
いすゞエルガミオ(東京アールアンドデー)
いすゞ自動車は、厳密にはEVバスを製造しているわけではありませんが、いすゞエルガやいすゞエルガミオなどがEVバスに改造され、国内の路線を運行しています。例えば、中型路線バスのいすゞエルガミオは東京アールアンドデーによってEVバスに改造され、宮城県気仙沼市などで運用されています。[注2]
導入車両の分類 | 導入地域 | 導入年度 | 導入事業者 | 車名/メーカー(改造事業者) | 特徴 | |
電気バス (短距離走行多頻度充電型) | 中型 | 宮城県気仙沼市 | 平成25年 | 東日本旅客鉄道 | いすゞエルガミオ(改)/東京アールアンドデー | 東日本大震災の早期復旧に向けて採用したBRT(バス高速輸送システム)に環境負荷低減と観光需要創出のために導入している |
大型 | 三重県伊勢市 | 平成25年 | 三重交通 | いすゞエルガ(改)/フラットフィールド | 伊勢神宮の式年遷宮の時期に合わせて設立された「電気自動車等を活用した伊勢市低炭素社会創造協議会」によって、CO2 削減、観光振興のために導入している |
EVバスの製造は中国が強い
しかし、EVバスの製造は中国メーカーがイニシアチブをとっています。特に中国のBYD(比亜迪)は、2021年2月に京阪バスでEVの運行を開始するなど、日本の市場を席巻しつつあります。
EVバスの製造において、中国が強いといわれる理由は2つあります。
・中国メーカーのEVバスは価格競争力に優れる
・充電ステーションや車両のメンテナンスなど、ワンストップでサービスを提供している
BYDのEVバスは圧倒的に価格が安いのが特徴です。小型のJ6は1台当たり1,950万円、大型のK8は1台当たり3,850万円と、国内のディーゼルバスとそれほど変わらない価格でEVバスを販売しています。国土交通省の「電動バス導入ガイドライン」によると、国内メーカーのEVバスの価格帯は6,000万円~1億円です。[注3]
中国メーカーのEVバスは、価格競争力を武器にシェアを拡大しています。
また、EVバスの導入時にネックになりやすい充電ステーションの設置や、車両のメンテナンスなどをパッケージ化し、ワンストップでサービスを提供しているのも中国メーカーの強みです。
EVバスの国産メーカーが少ない理由
100%電気で動くEVバスには、「環境負荷が小さい」「騒音がなく、乗り心地がよい」など、さまざまなメリットがあります。しかし、日野自動車などの例をのぞいて、EVバスの国産メーカーはまだまだ少ないのが現状です。
EVバスの国産メーカーが少ない理由は、新しい製品の市場投入に慎重になる傾向や、バス事業者の反応が読めず、投資効果が計算しづらい点などが挙げられます。しかし、いすゞ自動車や日野自動車が2024年に国産EVバスの生産を発表するなど、EVバスに対する国産メーカーの姿勢も変わりつつあります。BEV(バッテリー式電気自動車)とFCEV(燃料電池車)の部品の共通化などにより、コストダウンの目処が立ったことも国産メーカーの追い風となっています。
国産メーカーのEVバスなら、日野・いすゞのバスが利用可能
国内で運行しているEVバスには、日野自動車の日野ポンチョEVや、いすゞ自動車(東京アールアンドデー)のいすゞエルガミオなど、国産メーカーによって製造されたものもあります。中国メーカーのBYDを始めとして、EVバスの製造は中国メーカーがイニシアチブをとっているのが現状です。しかし、いすゞ自動車や日野自動車が国産EVバスの生産に乗り出すなど、徐々に国産メーカーの関心も高まりつつあります。
[注1]日本経済新聞:国内新車販売のEV比率最高 22年1.7%、米欧中には後れ
[注2]国土交通省:電動バス導入ガイドライン(P43)
[注3]毎日新聞:際立つ安さ「中国BYDのEVバス」が日本を席巻する