外国人をバスの運転手で採用できる?ポイントを解説
人手不足解消やインバウンド対応のために外国人の運転手を採用したいと考えるバス会社もあるかもしれません。しかし、外国人をバスの運転手として採用するのはかなり難しいのが現状です。
本記事では、外国人をバスの運転手として採用できない理由や、インバウンド需要の高まりへの対処法について詳しく解説いたします。
日本では外国人労働者が年々増加している
日本国内では近年、少子高齢化の影響によって各業界の人手不足が深刻化しています。この問題を受けて政府は、外国人が日本国内で働くための就労ビザの条件を拡大するなどの対処を行っています。
実際に、外国人を雇用する企業は年々増えています。在留資格を持ち日本国内で働く外国人労働者の数は10年間で3倍以上にまで増加しました。
外国人労働者の受け入れには技能実習生のほか、高度外国人材なども含まれます。また、永住者や日本人の配偶者の就労も進んでいます。
さらに最近では日本を訪れる外国人観光客も増加していることから、インバウンド対応のために外国人を採用するケースも増えつつあります。
外国人をバスの運転手として採用できない理由は?
日本で働く外国人は増加していますが、バスの運転手として外国人を雇用するのはかなり難しいのが現状です。
外国人をバス運転手として採用しにくいことには、以下の2つの原因があります。
運送業のビザがないため
外国人がバスの運転手として就労できない大きな理由はビザの仕組みにあります。外国人が日本で仕事をするためのビザには数多くの種類があります。しかし、これらのビザには運送業への就労が認められていないのです。
IT関連や教育、特定技能、介護などの領域には専用のビザがあります。外国でこれらの仕事をしていた人が就労ビザを使って来日し、日本で同種の仕事を行う例もあります。
バス運転手の場合は専用のビザがないため、外国でバスの運転業務を行っていた人が日本に拠点を移して同業種に就くということはほとんどありません。
運転免許を取得する必要があるため
バスの運転手になるために必要な免許も、外国人をバス運転手として雇用するときの障壁となります。
日本に在留している外国人には原則として運転免許の取得が認められています。もちろん免許の取得にあたって言葉の壁を感じることはあるかもしれませんが、所定の教習を受ければ留学生でも日本の運転免許を取得することが可能です。
バスの運転には大型二種免許が必要となります。バスの運転は単純労働に該当するため、免許取得後には外国人留学生であってもバスの運転手として働くことができます。
しかし留学生のアルバイトは週28時間以内に制限されています。バスの運転手の労働時間は長時間にわたることが多いため、留学生のアルバイトには向いていないのが現状です。
収入を伴わない在留資格をもつ方がバスの運転手を目指すことは可能です。しかし、大型二種免許を取得できるだけの技能や日本語力を持つ方は、より専門性の高い業種を選ぶことが多いものです。
結果的に、外国人をバスの運転手として採用する例はほとんどないのが現状です。
円安と規制緩和で訪日外国人が増加
新型コロナウイルス感染症の影響により、外国人観光客は一時的に大きく減少しました。2022年3月にまん延防止重点措置が解除され、6月以降には外国人の入国も許可されています。パッケージツアーなどを利用しなくても、自由に日本に旅行できるようになったのです。
政府はさらに2022年10月以降、入国上限の撤廃など入国制限の大幅な緩和に踏み切りました。主要7カ国で人数制限を最後に取り払ったのは日本なので、多少世界に出遅れたという見方もあります。
まだまだ新型コロナウイルス感染症流行以前の訪日外国人数の水準に戻ってはいませんが、インバウンド需要は少しずつ増加しています。また、現在円安が急速に進んでいることからも、訪日外国人の数が今後増加することが見込まれています。
新型コロナウイルス感染症による入国制限が行われる以前には「爆買い」という言葉が流行しました。日本を訪れる外国人の中には、日本でのショッピングを楽しみにしている方もいます。もちろん、外国人観光客が増加すれば交通運輸業や宿泊業など各業種の収益もアップしやすくなるものです。
自粛によって消費が滞っていた時期は終わり、今後はあらゆる業界で消費の大幅な拡大が見込まれます。
増加が予想される訪日外国人への対応のポイント
日本国内のあらゆる企業が、インバウンド需要の高まりへの対応を求められています。バス業界はバスの運転手として外国人を雇用することが難しいため、日本人スタッフで訪日外国人に対応する必要があります。
ここからは、増加が見込まれる訪日外国人にどう対応すべきかについて考えていきましょう。
簡単な英会話ができるようにする
日本人スタッフだけで外国人対応をせざるを得ない場合には、ある程度英語を話すことが求められます。お客様対応を担当するスタッフに日常的な英会話スキルを身につけさせることが重要です。
英語対応のためには、あらかじめ英会話の講習や研修を行うのが効果的です。また、英語のスキルをもつスタッフを新たに雇用するという方法も考えられます。
多言語化を目指す
スタッフの英語力向上に加え、設備の多言語化も順次進めていきましょう。
例えば案内看板には日本語だけでなく英語や中国語の案内も加えたほうが親切です。英語のアナウンスがあれば、外国人観光客によりスムーズな案内ができるようになります。
翻訳機などの設備を導入してインバウンド需要に備えるという方法も考えられます。翻訳機は英語や中国語のほか、数十カ国の言語に対応していることが多いため、状況に応じてフレキシブルに活用できます。
また、案内のためにピクトグラムを取り入れる例もあります。ピクトグラムは言語や文化を問わずあらゆる人に情報を伝えられる便利なツールです。もちろん、適宜イラストを使って説明するのも効果的な方法です。
多彩な支払い方法に対応できるようにする
決済の手段を増やしておくことも外国人利用客を増やす有効な方策です。
海外旅行で極力クレジットカード決済をしたいという外国人は多いものです。また近年では交通系ICカードや電子マネーによる決済といったキャッシュレスの需要も高まっています。
現金とキャッシュレスの双方に対応できれば、外国人観光客に安心して利用してもらえます。
設備を充実させる
外国人旅行者を受け入れるために、施設内の設備を充実させることも大切なポイントです。
特に外国人からの需要が高いのはWi-Fiや無線LANの設備です。パソコンやタブレット、スマホを持ち歩く観光客にとっては、速度の早いWi-Fiや無線LANの設備は必要不可欠なのです。
文化の違いを把握しておく
日本人スタッフが外国人観光客の対応をする際、文化の違いに驚かされることもあるかもしれません。外国人が日本のマナーを知らずにトラブルになるケースのほか、日本人スタッフが外国人の風習や宗教上の慣習を知らずクレームに発展する例もあるものです。
マナーの考え方や風習などが異なることを十分に理解し、柔軟に外国人観光客への対応を行うことが肝心です。
高まるインバウンド需要に向けて多方面での環境整備を行う
日本で働く外国人の数は増加していますが、バスの運転手として外国人を雇用するのはかなり難しいのが現状です。とはいえ、今後法改正によってビザの制限が緩和されれば、外国人を運転手として採用できる可能性も考えられます。
円安や規制緩和の流れを受けて現在ではインバウンド需要が高まりを見せています。外国人観光客が安心して旅行できるよう、環境を整えておもてなししたいものです。